《おはよう どうでもいいわ》

デビューから現在に至るまで、ほぼリアルタイムで全作品を聴いている数少ないアーティスト、Phew(ヒュー)。

1980年、PASSレコードから発売された1stシングル「終曲(フィナーレ)」は衝撃だった。聴く者を突き放すような歌いかた、虚無的でシュールな歌詞、坂本龍一によるダブ処理が施されたサウンド・コラージュは現在の耳で聴いても十分に刺激的だ。

ソロデビュー前に活動していたバンド「Aunt Sally」。1stアルバムは入手困難で、その音楽に触れるのは1984年の再発を待たねばならなかった。

ベレー帽をかぶったPhewのモノクロ写真。ギターの不協和音と不穏な空気を醸し出すベースの間から 《おはよう どうでもいいわ》 と抑揚なく繰り返される表題曲を聴き終えたときには、すっかり虜にされてしまった。

ひと目見て惹きつけられる、独特な空気感のあるジャケットが鋤田正義氏の撮影と知ったのは、それから30年後。2014年に開催された「鋤田正義展 サウンドアンドヴィジョン」(東京都写真美術館)の会場に入った時である。モノクロ写真の粒子感が素晴らしかった。

現在はCDで持っている作品であるが、明日の音楽視聴会 Part4 テーマ「ジャケ買いしたこの一枚」を前に、LPレコードを手離さなければ良かったなぁ、と悔やんでいる。

[投稿者:この辺りの者でござる]


2018年1月、声のみを使って制作された最新アルバム 『Voice Hardcore』がリリースされました。


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